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ホームレス問題、デフォルト、決められない政治…“超大国アメリカ”の不都合な真実

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このところ、本誌は立て続けにアメリカの危機を報じてきた。それは財政危機による債務不履行(デフォルト)を念頭においていたが、多くの人々が気付きはじめている様に、これは財政のみの問題ではない。もっと根本的な問題、それはアメリカの弱さが大胆に露呈してきたという“不都合な真実”だ。考えてみれば、これは度々言われてきたことであった。彼らが9.11に直面し、テロ戦争の泥沼へと引きずりこまれ、そして世界的な金融危機がやってきた。アメリカにとって2000年代は、たしかに不幸な時代ではあったが、しかし間違いなく言えることは、その不幸は“どこからともなくやってきた”わけではないということだ。

 

過去最悪の貧困率

日本において、アメリカの国内問題に触れることはそれほど多くない。たしかに、「アメリカは格差社会」であるという話はちらほらと耳にする。が、いくらなんでも超大国アメリカだ。それほど悲惨ではないだろう、と思うかもしれない。しかしながら、悲惨なのだ。

アメリカ国勢調査において貧困ラインとして定められているのは、2010年では一世帯家族4人の年収が22,314ドル以下の場合だ。この定義によると、アメリカでは当時4620万人が貧困層であるという見方になる。これは、15.1%という強烈な割合であるが、事実、1993年以降で最悪の数字となっている。2012年には、この数が4700万人へと上昇したという調査結果もあり、いずれにしても状況が改善していないことが明らかだ。

 

子ども、白人、高学歴者の貧困

こうした貧困層は、黒人や退役軍人に留まらず、失業者や郊外に住む家族、そして白人や高学歴者など多岐に及んでいる。ヒスパニック系などのアメリカで度々話題となる移民集団以外にも、アジア系の中では韓国系やベトナム系の貧困率が目立っている。また、貧困にあえぐ子供の割合が増えてきたことも問題であり、その貧困率は2010年の22%水準から更に増加すると見られている。

また、中産階級はここ30年で世帯収入がほとんど成長しておらず、インフレ率を考慮した場合、彼らがどんどん貧しい地位へと追いやられていることが明らかとなっている。ラスベガス郊外などはこうしたケースの代表格として知られ、これまでの貧困像から一線を画している。具体的に貧困に陥るパターンとして、それまで失業保険を受給していた人が、受給期限の終了したあとに仕事探しを諦めてしまうケースがあると言われ、彼らに対してどのようなサポートが出来るか、大きな課題となっている。

 

貧困を露呈したハリケーン・カトリーナ

伝統的に貧困層が多い南部では、相変わらず深刻であることも分かっている。2011年の国勢調査では、ミシシッピ州の平均的な世帯収入が、わずか37,985ドル(当時のレートで約292万円)であった。世界中に、それを印象づけた出来事は、2005年の大型ハリケーン・カトリーナであった。脆弱な社会基盤は、アメリカの凋落を印象づけ、アフガニスタンやイラクに多くの兵士を送り込んだ結果、国内のアメリカ国民に手を差し伸べることができない本末転倒ぶりに批判が集まった。

こうした地域では、洪水や街の大規模な機能マヒに伴って「無政府状態」が出現。軍の出動もままならないまま、貧困層の怒りが吹き出している場面を多くの国民は呆然と眺める外はなかった。

 

シリコンバレーの億万長者、の隣のホームエレス

貧困問題は、世界的な企業が集まるカリフォルニア州のシリコンバレーにまで押し寄せている。最も有名な例は、Googleの従業員だったダニエル・ガルシアだろう。彼はグーグル・キャンパスとよばれる一大帝国の食堂で働いていたが、いつの間にか路上に行き着いた。

ベイ・ビューと呼ばれるエリアには、黒人のホームレスが道に溢れている。アメリカの地方都市に行けば容易に目にすることが出来る、真っ黒なスウェットとTシャツを着た黒人が、破れた窓ガラスと鉄格子のはめられた家の前に座り込む光景が、世界で最も裕福な人々が集まるシリコンバレーにある。多くの観光客は、Googleやfacebookのオフィスを見学するが、こうしたエリアに足を踏み入れることは殆ど無い。

 

緩やかな景気回復?

これまで伝えてきた財政危機やデフォルトの問題は、なにも昨日今日になり突如として発生した問題ではない。むしろ、アメリカの失業率は2009年の9.28%と2010年の9.63%という最悪の状態を脱して、2011年には8.93%で、ついに今年に入っては7%代と低下を示していた。株価も回復傾向にあり、最悪だった世界金融危機以降、アメリカは徐々に回復してきたように見えたのだ。

しかし結局のところ、「緩やかな回復傾向」と呼ばれるアメリカの景気状況であっても、米連邦準備制度理事会(FRB)が金融緩和縮小の見送りを決定したように、予想通りには景気回復が実現しなかった。こうしたアメリカの現実が、彼らの大きな国内問題の足かせとなっているのだろうか?

 

“強い1つのアメリカ”

おそらく、それだけではない。と、言うよりも、むしろアメリカの抱える最も大きな問題は、景気回復がそれほど強力ではなかったことでは“ない”。今回の債務危機を見ても分かるように、アメリカが抱える問題は明らかに政治の問題だ。これは、「強い1つアメリカ」という対テロ戦争が開始したことに打ち出された強力なメッセージが、その効力を弱めているとも言える。

今回の債務危機をめぐって、上院では暫定予算案審議において、政治運動「ティーパーティー」を推進するクルーズ上院議員が、法案通過を阻止するために、21時間に及ぶロングラン演説をおこなった。ティーパーティの影響力は、オバマケア批判をめぐって再び勢いを盛り返しているが、これはその背後にある「大きな政府」への疑念に他ならない。

 

“余計な金”はない

国民皆保険に反発する「税金はもうたくさん」という声のように、アメリカでは「大きな政府」と「小さな政府」をめぐる対立がより一層鮮明になっている。前述した様に、山積した国内問題の1つである貧困層への政治を進めようとするにも、オバマは、政府が「怠けた黒人」を助けようとすることに反対する層から強烈な反対にあっている。

もちろん、この構図は近年に限ったものではない。むしろ、伝統的にアメリカにとってこうした構図は強いイデオロギー性を持っていたとも言える。しかしながら、対テロ戦争や金融危機を経て、アメリカ人が気づいたことは、「我々は(それほど)強くないのではないのだろうか?」という疑念だった。だからこそ、彼らは少なくとも自分には直接影響を及ぼさない問題に対しては、断固たる姿勢を見せることにした。つまり、自分が貧困層ではない限り、彼らを助ける“余計な金”はない、ということをはっきりと意思表示することにした。

 

「不都合な真実」は終わらない

景気回復が進んだとしても、そして、今回の債務危機を乗り越えたとしても、アメリカの「不都合な真実」は解消されない。彼らが、自国の弱さに気づいたならば、弱者に対する寛大な処置は終了し、より分裂はラディカルに、そして修復不可能なほどに進んでいくだろう。

バラク・オバマは、どこかのタイミングで強力な決意を示さなくてはならない。それは、シリアに対してでも、イスラエルに対してでもない。それは、アメリカ国民自身に対してだ。そして、それは「アメリカは1つだ」というメッセージだ。

ジョージ・W・ブッシュは、それを対テロ戦争という分かりやすく、強烈な方法で示すことに成功した。彼の前には(当然のことだが)ティーパーティは存在せず、どういった形であれ国民を1つにまとめあげた。言うまでもなく、オバマは前大統領と同じ手法は採択できない。そう。彼は、民主党員であり、しかもノーベル平和賞の受賞者でもあるのだ。

 

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