BuzzFeedとは何か(前編):その概要と知られざる創業者

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石田 健

石田 健

株式会社マイナースタジオ代表取締役CEO。同社を創業後、2015年に株式会社メンバーズ(東証一部)に売却。早稲田大学政治学研究科修士課程修了(政治学)。

BuzzFeedが、いよいよ日本に上陸することを明らかにした。

日本においては、すでにバイラルメディア狂騒が落ち着いてきた所以か、それほど騒がれていない印象だが、いよいよ彼らの動向が日本でも本格的に注目をあびることになるだろう。

BuzzFeedについては、佐藤慶一氏のブログなどでよく知られているため、改めてBuzzFeedとは何かについて説明する必要はないかもしれない。

そこで今回は、BuzzFeedがどんな企業であるかについて簡単に触れた上で、彼らがなぜすごいのかという点を個人的な視点から考えていく。

結論を先取りするならば、彼らのすごさは「バイラルを引き起こすこと」でも、「ネイティブ広告で収益化していること」でもない。むしろ、それに注目することで、「日本のバイラルメディアの先駆け」としてBuzzFeedを理解してしまっては、その興味深いポイントを見誤ってしまうだろう。

彼らのすごさは、大きく3点ある。1つは、伝統的メディアと新興メディアが溶け合う狭間、その最前線にいること。

もう1つは、彼らをその位置に押し上げている、シェアに関する思想について。

そして最後の1つは、その思想によって定義された”サービス”が、彼らと伝統的メディアとの接近をよりナチュラルなものへと変化させていることだ。

BuzzFeedとは何か?

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まずBuzzFeedとはどのような企業なのだろか。主要なデータのみを抜き出すと、以下のようになる。

創 業:2006年(正式には2008年)
本 社:ニューヨーク
創業者:ジョナ・ペレッティ(Jonah Peretti)、ジョン・ジョンソン(John Johnson)
サイト:http://www.buzzfeed.com
調達額:44億6300万ドル

これまで40億ドル以上の大規模な資金調達をおこなっているが、そのラウンドは以下の通り。

Series G($200M)

日 付:2016年
投資家:NBCユニバーサル(Lead)

Series F($200M)

日 付:2015年8月18日
投資家:NBCユニバーサル(Lead)

Series E($50M)

日 付:2014年8月10日
投資家:Andreessen Horowitz

Series D($19.3M)

日 付:2013年1月3日
投資家:New Enterprise Associates (Lead) 、Kass Lazerow、Lerer Hippeau Ventures、Michael Lazerow、RRE Ventures、SoftBank Capital

Series C($15.5M)

日付:Jan 9, 2012年1月9日
投資家:New Enterprise Associates (Lead) 、Hearst Ventures 、Lerer Hippeau Ventures 、 RRE Ventures、SoftBank Capital

Series B($8M)

日 付:2010年5月12日
投資家:RRE Ventures (Lead) 、Founder Collective、Hearst Ventures、John Johnson、 Ken Lerer、Ron Conway、SoftBank Capital、SV Angel

Series A($3.5M)

日 付:2008年7月9日
投資家:Hearst Ventures (Lead)、John Johnson、Ken Lerer、SoftBank Capital

2015年と16年に2度に渡って巨額の投資をおこなっているのがNBCユニバーサルだが、彼らはNBCやユニバーサル・ピクチャーズなどを保有する企業で、アメリカ最大手ケーブルテレビのコムキャスト(Comcast)傘下にある。

他にも有力VCであるAndreessen Horowitzや、SoftBank Capitalの名前が目立つ。

ジョナ・ペレッティとジョン・ジョンソンについて

では、これほどまでに巨大な企業をつくった2人の創業者はどのような人物なのだろうか。

まずジョナ・ペレッティはよく知られた人物だ。カンフェレンスやメディアに登場するのは、主にペレッティだからだ。

彼の名前は、日本でもよく知られるThe Huffington Postの共同創業者の1人としても知られている。

ペレッティは、1974年1月1日生まれの現在41歳。カリフォルニア州オークランドで育ち、大学はカリフォルニア大学サンタクルーズ校出身。学部時代は、環境学を学び、ミシェル・フーコーやカント、そしてマルクスにロラン・バルトといった思想家を読んでいたという少し変わった経歴。

そんなペレッティは大学卒業後に、とある高校で教員をしながら、コンピューターを基軸にしたユニークな授業をおこなっていた。その後、縁あってMITメディアラボに入学した彼は、とある事件を引き起こす。

それはNIKEのスニーカーに自由なプリントを施すサービスに、「sweatshop(搾取工場)」とリクエストしたことだ。これがNIKE側から拒否され、同社とのメールのやり取りをネットで公開したところ、大きな反響が集まることになる。

彼は一躍時の人となり、”バイラル” に関心を持つことになる。

その後ペレッティは、The Huffington Postの立ち上げを経て、サイド・プロジェクトだったBuzzFeedに専念。その後の躍進は、言うまでもない。

では、もう1人のジョン・ジョンソンとは誰だろうか?

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(Photo : BuzzFeed

彼は、日本ではほとんど脚光を浴びることのない人物だが、非常に興味深い経歴を持っている人物だ。

彼とペレッティの出会いは、ニューヨーク・マンハッタンのチェルシー地区にある「Eyebeam Art + Technology Center」という研究センター。この研究ディレクターに応募してきたのがペレッティだった。

この聞き慣れないマルチメディア・センターは、世界的な製薬・ヘルスケアコングロマリット企業ジョンソン&ジョンソンを創業した兄弟の1人、ロバート・ウッド・ジョンソン(Robert Wood Johnson I)による財団の相続人であるジョン・ジョンソンによってはじめられた。

彼は、この団体で若いアーティストや技術者を支援したり、インディペンデント映画のための奨学金を提供していた。

名前からも想像出来る様に、BuzzFeed共同創業者のジョン・ジョンソンとは、ジョンソン&ジョンソン創業者の子孫なのだ。

こうしたつながりは現代アメリカにおいて興味深いものであり、単に金持ちの道楽と侮るわけにはいかない。ロバート・ウッド・ジョンソンの子孫には、映画界やアート界に貢献をしている人物が何人か見られるが、ジョンソンもその1人なのだ。

ジョンソン一族を簡単に整理すると、以下のようになる。

ロバート・ウッド・ジョンソン(曽祖父)

1845~1910年。ジョンソン&ジョンソン創業者。

ジョン・シュワード・ジョンソン1世(祖父)

1895~1983年。フロリダアトランティック大学のハーバーブランチ海洋研究所(HBOI)の創設者。

ジョン・シュワード・ジョンソン2世(父)

1930年~。彫刻アーティスト。「フォーエバー・マリリン」や「無条件降伏」などの作品で知られる。

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(フォーエバー・マリリン、Photo: www.kcet.org

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(無条件降伏、Photo : nyclovesnyc.blogspot.com)

ジョン・ジョンソン(ジョン・シュワード・ジョンソン3世)

BuzzFeed共同創業者。Eyebeam設立者。

余談となるが、シュワード・ジョンソン一家は、女性関係などの家庭内問題でしばしば揉めており、財産をめぐっての訴訟も幾つか見られる。

いずれにしても、このマルチメディア・センターでは、ジョンソン曰く「アートの世界と初期のインターネット文化が衝突する瞬間」について研究されていた。

ジョンソンは、コロンビア大学において社会科学の方法論や定量的研究に関する研究で修士号を取得しているが、この研究所にもコロンビア大学関係者が数多く関わっている。

例えば、Yahoo!で主任研究員を務めている、コロンビア大学のダンカン・ワッツもその1人だ。

このグループは、「アイデアがソーシャルネットワークを介して、いかに伝播していくのか?」ということを研究していたが、ペレッティもその議論に関心を持つことになる。

すなわち、現在のBuzzFeedの萌芽はここにあると言える。

もともと哲学的な問題や社会的な話題に関心の深かったペレッティだが、ニューヨークでジョン・ジョンソンらのグループと出会ったことで、その方向性が決定する。その実験的なプロジェクトの結実が、BuzzFeedなのだ。

現在のBuzzFeed

では具体的に現在のBuzzFeedは、どれほどのインパクトを持っているのだろうか?最近の発表から、その数字を概観していこう。

  • アメリカ国内における月間ユニーク訪問者8240万人(2015年7月)
    comScoreによる調査。そのうち半数が、18-34歳のミレニアル世代。
  • グローバルでの月間ユニーク訪問者2億人(2015年8月)
    BuzzFeedによる発表、これは昨年のほぼ2倍。
  • 月間再生数10億回(2015年3月)
    BuzzFeedの動画スタジオ(BuzzFeed Motion Picture)による動画の月間再生数が、10億回を突破。
  • 以下は、2014年の1年間を通じた数字だ。

  • 5万8655年分の滞在
    人々がBuzzFeedで2014年に過ごした時間の合計。
  • 160億PV、2億シェア、50万コメント
    2014年に読まれた記事の合計。
  • 5つの言語
    BuzzFeedは現在、英語・フランス語・ドイツ語・ポルトガル語・スペイン語で読める。
  • 25の地域からレポート、4つの新たなブランチ(オフィス)
    新たなブランチは、シドニー・ベルリン・ムンバイ・サンパウロ。
  • 2014年は動画についても積極的な投資をおこなった。

  • 1500の新たな動画
    1日5本のペースで新たな動画が公開されている
  • 合計再生数45億回
    前述の月間再生回数と比べると興味深い。2014年を通じて、45億回だった再生回数は、わずか3ヶ月で月間10億回に達している。このペースならば、月間100億回にもすぐに届くだろう。
  • 10の新たなセット
    ハリウッドに新たな10箇所のスタジオを用意。
  • 彼らの収益源であるネイティブ・アドも順調だ。

  • 435のクライアントと841のプログラム
    相変わらず順調な販売が目立つネイティブ・アドだが、かなりの数のクライアントを抱えている
  • 2億7000万PV
    クライアントのためにつくったコンテンツも、通常コンテンツの様にバズらせるのが、彼らの特徴
  • クライアントのためにつくった動画は65個
    こちらはまだまだ数字が伸びそう
  • いずれも素晴らしい数字を生み出している。

    とはいえ、もはや単なるトラフィック面での成果以上に、最近のBuzzFeedがアピールしているのは、ニュースの充実と動画の強化だ。

    例えば、最近では前Guardian US編集長だったジャニー・ギブソン(Janine Gibson)をBuzzFeed UKの編集長に置いた。バラク・オバマ大統領へのインタビューと合わせて、BuzzFeed Motion Pictureによる動画も制作されている。

    WIREDからはマット・ホーナン(Mat Honan)を引き抜いており、大きなインパクトを持っていた人材獲得といえば、2012年にPoliticoからやってきた編集長ベン・スミス(Ben Smith)だろう。

    クリエイティブ面でも人材の獲得が進んでいる。ペプシコの前CMOだったフランク・クーパー(Frank Cooper)は、新たなChief Marketing Officer 兼 Chief Creative Officer に就任。

    BuzzFeedは現在数字としては成熟しつつあり、ニュースや動画の強化、それを推し進める人材の獲得によって、新たなフェーズに入っていくと言えるだろう。