石田 健

石田 健

本誌編集長。1989年生まれ、早稲田大学文学部で歴史学を専攻した後に、同大政治学研究科修士課程修了(政治学)。 株式会社マイナースタジオ代表取締役CEO。Twitter : @ishiken_bot

1日夕方、安倍内閣は臨時閣議を開催して、憲法解釈によって集団的自衛権の行使を認める閣議決定をおこないました。これまで、日本が直接攻撃を受けた場合に防衛をおこなう「専守防衛」に徹してきた日本にとっては、同盟関係などにある他国が攻撃された場合にも武力行使をおこなうことができるようになります。

今回の閣議決定については、Bloomberg や Wall Street Journalなども次々と「安保政策の大転換」として報じていて、国内外から大きな注目を集めていることが分かります。

そもそも、①戦後日本が歩んできた安全保障政策とはどのようなものであり、②なぜ今回、大きな転換を迎えることになったのでしょうか?そして、③今回の行使容認は何が問題視されているのでしょうか?

戦後の安全保障政策とは?

「安全保障」政策とは、ある国家が、他国からの攻撃を防衛したり、自国民の安全を守るための様々な政策です。いまの日本の安全保障政策は、第二次世界大戦の終戦によって規定されていると言えます。

第二次大戦後、国際社会はアメリカとソ連の冷戦に突入しましたが、アメリカ率いる自由主義陣営の一員であった日本は、戦争の反省から平和主義を掲げた安全保障を進めてきました。日本は、ソ連と中国という2つの共産主義大国に接しており、アメリカ国内には日本を再び軍備化させることを求める声も強くありましたが、最終的には自衛隊の保有とともに「専守防衛」の理念が続くことになります。

こうした中で、「集団的自衛権」は国連憲章でも明文化された権利であるにもかかわらず、これまでの日本政府は「憲法9条が国際紛争解決の手段としての武力による威嚇または武力行使を禁じており、自国の防衛以外に武力行使はできない」とする立場から、その権利行使を認めてきませんでした。

なぜ大きな転換点に?

しかし冷戦体制の崩壊後は、湾岸戦争や9.11後の対テロ戦争など国際情勢に大きな変化が生じてきます。これまでの国家を対象とする戦争から、テロリストを相手とする戦いが世界中に拡大したことも、その理由の1つです。

これに伴って、アメリカの同盟国として、また国際社会の一員である経済大国として、日本にも「資金以外の貢献」が求められるようになったのです。

こうした変化に加えて、中国の軍事力が増強されるなど、東アジアにおいて安全保障環境が変容していることなども、安倍政権が安全保障政策の見直しを打ち出す契機になりました。

安倍政権はこれまでも、秘密保護法の制定や日本版NSCの創設など、安全保障分野の転換を熱心に進めてきましたが、集団的自衛権の行使容認はその最後の砦とも言えます。

閣議決定では、パワーバランスの変化や技術革新、大量破壊兵器などの脅威によって「わが国を取り巻く安全保障環境が根本的に変容し、変化し続けている状況」に直面していることが指摘されています。

こうした国際環境の変化を理由として、戦後からこれまで、政府解釈によって違憲とされてきた集団的自衛権の行使が容認される方向性になったのです。

なにが問題?

以上の経緯をたどってきた日本の安全保障政策ですが、今回の集団的自衛権の行使容認については批判も強まっています。6月30日の夕方から深夜にかけて国会周辺には多くの人がデモに集まり、抗議の意を表明しています。

その中でも集団的自衛権の行使容認そのものに反対する声もありますが、十分な議論がおこなわれていないことや、選挙に勝てば憲法解釈を自由におこなえることで立憲主義の原則が崩れてしまうことも懸念されています。

与党側からは、「憲法改正では行使容認が実現できないために、解釈改憲をおこなった」という(立憲主義の原則を無視するような)声もあり、こうした説明からも国民の危機意識は高まっていると言えるでしょう。

実際に集団的自衛権が国連憲章で明文化されていることなどを考えれば、「日本も集団的自衛権を行使するべきだ」という議論自体が持ち上がることは不思議ではありません。しかし、それが政権の判断による憲法解釈によってなされたことは、大きな意味を持っているでしょう。その意味でも、今回の事態は「戦後日本の安全保障」にとっても大きな転換点になるかもしれないのです。

Photo : Hudson Institute
石田 健

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本誌編集長。1989年生まれ、早稲田大学文学部で歴史学を専攻した後に、同大政治学研究科修士課程修了(政治学)。 株式会社マイナースタジオ代表取締役CEO。Twitter : @ishiken_bot