分裂するアメリカ ― なぜシャットダウンは回避できなかったのか?(1)

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アメリカの政府閉鎖(シャットダウン)について、本誌には多くの人から関心が寄せられた。17年ぶりのシャットダウンは衝撃的であったが、なぜアメリカはそれを回避できなかったのだろうか?この問いかけは、2つの問題を考えることで明らかになる。1つは、オバマにとって、なぜ「オバマケア」がそれほど重要であったのかという問題だ。そして、もう1つはなぜ共和党は、これほどまでに「オバマケア」を敵視するのかという問題だ。

今回のシャットダウンが、「オバマケア」をめぐる議論を中心として生み出されたことを考えると、問題の中心にオバマケアを持ってくることは、さほど的外れではない。ただし、この問題が単なる1つの政策をめぐる是非というよりも、より広範なアメリカ社会が直面している「分裂」を表現していることは確かだろう。

 

保守とはなにか

この2つの問題を考えるには、少しばかり「保守」について確認したい。ここから、しばしば「保守」という言葉出てくるが、これが具体的にどのような意味を指すのかを定義するべきだろう。

保守とは、伝統の重視、共和主義の支持、キリスト教における規範などによって特徴づけられる。しかし、少々一面的すぎる理解ではあるが、保守主義の中にもいくつかの分類がある。

①経済的保守主義:これらは「小さな政府」、低い税率、少ない規制、および自由な市場を好む。

②社会的保守主義:伝統的価値観を重視し、世俗主義の脅威を危険視する。教育機関におけるキリスト教礼拝や、人工中絶や同性結婚の合法化への反対。

③新保守主義・超保守主義者:アメリカの理想を強い外交や強い軍隊によって世界へ広げることを好む

これらは、常に対地概念である「リベラル」とセットにして語られる。興味深いことに、ここで「保守」と呼ばれる思想は、アメリカ以外の地域ではしばしば(特に経済政策の文脈において)「自由主義」や「新自由主義」と呼ばれる。アメリカの歴史をたどると、しばしばこの「保守」と「リベラル」の対立によって政治が動いてきたことが分かる。

 

保守・共和党のティーパーティー?

では、オバマケアの支持者・反対者はそれぞれどちらに位置するのだろうか?Gallup.comの世論調査1を見てみると、その傾向ははっきりする。以下は、ティーパーティー運動の支持者に対して、そのイデオロギー構成を尋ねたものだ。

保守:71% 穏健:22% リベラル:7%

そこには、保守が大半を占めていることが分かる。では、彼らの支持政党はどこだろうか。同様の調査で、以下のとおりになっている。

共和党:49% 無党派:43% 民主党:8%

少し図式的な理解になり過ぎてしまうが、反オバマの勢力が「保守・共和党」であることがわかる。これはオバマが民主党であることを考え、その二大政党としてその政策に反対する共和党という構図を考えると、当然のことに見えるかもしれない。

しかし、ここまで見てきたように一口に「保守」といってもそこには様々な見解を含んでいる。保守と言うと宗教的なものを想像してしまい、中絶やキリスト教の問題との関連性を考えたくなるが、それは「社会的保守主義」とその他の対立であるかのように錯覚してしまい、そこには問題がある。

 

無党派層の影響

ティーパーティー運動の、保守派としての側面ばかりを強調してしまうと、今回の議論がアメリカを分裂させるほどのインパクトであることを忘れてしまう。なぜなら、上述の世論調査では、ティーパーティーの支持政党は共和党ばかりではなく、無党派層を大部分取り込むことに成功しているからである。同様の調査では、アメリカ人の成人男性の支持政党の割合も併せて掲載している。

共和党:28% 無党派:40% 民主党:32%

これを見ると、一定数の無党派層がティーパーティー運動へと流れ込んでいることがよく分かるだろう。そうであるならば、現在アメリカで起きている“分裂”が、「共和党vs民主党」という構図だけでは理解できないことがわかるはずだ。

では、無党派層はなぜ、近年になって「保守・共和党」的であるとさえ言われる運動へ参加するようになったのだろうか?彼らは、オバマ政権の何に反対しているのだろうか?

 

「大きな政府」を倒せ!

2010年の選挙に際して、ティーパーティーの候補者は外交問題や社会問題などに殆ど触れずに、連邦政府の歳出と赤字へと議論を集中した。2財政赤字が問題視することに異論がある人は少ないはずであり、より争点となるのは、歳出の問題だ。例えば、ディック・アーミー元共和党下院院内総務は『われわれに自由を:ティーパーティーのマニフェスト(Give Us Liberty: A Tea Party Manifesto)』という著作を出しているが、彼は「小さな政府」の旗印になっている。

アーミーに代表されるように、ティーパーティーの支持者は「小さな政府」の熱狂的な支持者だ。この運動が、もともとサブプライムローン危機に際して、政府による救済への反対運動からやってきたことを思い起こせば、それは当然なことであるが、このイデオロギーに共感する人々は、何も「保守・共和党」に限らないことがポイントなのである。

政府による社会保障政策改革に対する意見の相違を見てみよう。上がアメリカの成人一般の割合で、下がティーパーティー運動支持者のそれである。

(成人)改革は良いことだ:47% 悪いことだ:50%

(TP支持者)改革は良いことだ:12% 悪いことだ:87%

社会保障政策の見直しについて、世論が二分されている中で、ティーパーティー支持者は、この問題へ強固に反対していることが分かるだろう。彼らは、サブプライムローンで悲劇に陥った市民を救済することに反対し、国によって手厚い社会保障がなされるべきではないと考えているのだ。

 

“普通のアメリカ人”

では、こうした主張を繰り返しているのは誰だろうか?それは、ティーパーティーに無党派層の影響力が無視できないことからも分かるように、“普通のアメリカ人”だ。以下には、同調査によるティーパーティー運動とアメリカの成人との対比である。

(成人)男性:49% 女性:51%

(TP支持)男性:55% 女性:45%

 

(成人)年収300万ドル未満:25% 300-499万ドル:25% 500万ドル:50%

(TP支持)年収300万ドル未満:19% 300-499万ドル:26% 500万ドル:55%

 

(成人)18-29歳:17% 30-49歳:36% 50-64歳:27% 65歳-:20%

(TP支持)18-29歳:16% 30-49歳:34% 50-64歳:29% 65歳-:21%

 

(成人)高卒未満:35% 大卒未満:32% 大卒:17% 大卒以上:16%

(TP支持)高卒未満:34% 大卒未満:34% 大卒:16% 大卒以上:15%

 

(成人)非ヒスパニック系白人:75% 非ヒスパニック系黒人:11% その他:15%

(TP支持)非ヒスパニック系白人:79% 非ヒスパニック系黒人:6% その他:15%

 

ここまで見て分かるように、ティーパーティー運動を支持しているのは特殊な層ではない。彼らは典型的な「WASP(ホワイト・アングロサクソン・プロテスタント)」にも見えるが、人種における「その他」の割合が多いことや、高卒未満が大きな割合を占めていることなどには注目できる。

以上のように、本記事においてはアメリカにおきている“分裂”がどのようなものかを概観したが、それは「民主党と共和党の対立」や、「社会的保守主義」と「その他」の間に生じる摩擦という観点では十分に捉えられないことがわかった。むしろ、そこにあるのは「普通の人々」の間にある、「大きな政府」と「小さな政府」に関する強固な意見の相違であり、この観点からアメリカ社会における対立について、考えていく必要があるだろう。

 

 

  1. http://www.gallup.com/poll/127181/tea-partiers-fairly-mainstream-demographics.aspx []
  2. http://thecaucus.blogs.nytimes.com/2010/10/21/tea-party-foreign-policy-a-bit-cloudy/?_r=0 []